*革について


革はさまざまな表情を持った、面白い素材です。

ただ、革という素材を、ただ面白いから、好きだからという理由だけで扱うことにはためらいがありました。
元は生き物…「命」であることを考えると、その命に対する敬意がなければ扱っていくことはできないという思いがありました。

革を扱うことへの決意が生まれたのは、太古の人間の営みから生まれた「動物を狩る、その肉を頂く、その皮は鞣(なめ)して利用する」という取り組みを知ってからです。


「皮」は生き物から剥いだ状態のもの。そのままではコラーゲン(ニカワ)で固くなってしまったり、腐ってしまったりします。
これを「鞣す」という作業で「革」に仕上げるのです。

縄文時代の人間は、皮を鞣(なめ)すために歯で何度も噛むことで脂肪やコラーゲンなどを取り除いていたそうです。そのため、遺跡から発見された古代人の歯(特に経産婦の女性の歯)は、皆極度ににすり減っていたそうです。
歯がすり減るということは、歯の内側の神経がむき出しになり、強い痛みを伴ったと思います。
そのような苦労をして皮を鞣し、のちに煙でいぶしたり植物の灰汁で煮たりと工夫を重ねて、人類はより良い鞣しの方法を編み出していったのです。

余さず頂く、そのために工夫する」
この古代からの人類の取り組みに、私は崇高な意志を感じました。

こうした古代からのものづくりに対する取り組みを、できることなら現代に受け継いで作品を作りたい。  
なのでKALEIDOSCOPEは、装飾目的で採取される毛皮や、希少な生き物、特殊な生き物の革は使いません。
食肉の副産物として採れた皮を、古くからの鞣し方法である「植物タンニン鞣し」で仕上げた革にこだわって、作品づくりをして行きたいと思っております。

植物タンニンで鞣された革は、化学薬品を使った「クロム鞣し革」に比べ、工程が多く高コストにはなりますが、経年の
変化が楽しめる素材です。使う人、使い方によって、その変化の出方は違いますので、使い手のクセを吸収して実にその人らしい革に育っていきます。
手にしたときが完璧なのではなく、長い時間をかけて愛着が増していく素材とも言えます。

材料は皮と植物の渋。化学的なものに頼っていません。自然素材にこだわりのある方には特におすすめの素材です。



*金具について




金具類は、東京下町の職人さんが手作業でつくられたものを選んで仕入れをしています。
個人なので、大きな力にはなりませんが、日本の手仕事を守るためにも、なるべくジャパンメイドのものを取り入れたいと思っております。

それ以外にも、昭和時代の、作りのしっかりしたデッドストック金具を問屋さんから紹介してもらったり、現在の日本では作られていないものは、ヨーロッパの金具メーカーから取り寄せるなどして、自分の目で見て、良いと思ったものだけを選んで使用しています。




真鍮無垢の金具が手に入る場合は、極力真鍮のものを使うようにしています。

真鍮(ブラス)は銅と亜鉛の合金で、黄銅とも呼ばれています。
美しさと重厚さ、どことなく懐かしさを醸し出す真鍮の表情は、使い込むほどに年輪を重ね味わいある美しい色調に変化します。
ヨーロッパでは古くから、真鍮は幸福をもたらす金属として好まれ、生活のさまざまな場面で使われてきました。


真鍮は時を経ることで美しさや味わいが増していくので、経年変化を楽しめる革製品とは相性が良いと思います。