これは、少し私的なお話です。
私は、雪国の小さな町で生まれました。
そこでは「大場姓」が多く、家々は屋号で呼び合っていました。
私の家は「海軍」と呼ばれていました。
内陸の雪国で「海軍」と呼ばれる不思議さは、
やがて町を離れ、その名前も忘れていた頃、
母との会話の中でふとその記憶が蘇り、
私は、思わず手を止めました。
懐かしいという感覚。
ものづくりは「時を刻む」ことに似ていると思います。
ひと針、ひと裁ち。
それは、海図に小さく航路を標すような作業です。
「カレイドスコヲプ」という名を選んだとき、
ただ、万華鏡が好きだった。
色と光が交差し、描かれる、奇跡のようなかたち。
自分の作るものも、そんな存在でありたいと思ったのです。
あとになって気づきました。
その模様は、雪の結晶にも、船の舵輪にも似ていて
それは私の原風景と、きっとどこかでつながっていたのだと。
カレイドスコヲプは、
あなたの旅の舵輪に、
この船旅を、ここまで続けてこられたのは、
灯台のように、あなたが見ていてくれたから。
KALEIDOSCOPE 大場さや夏